髪をつかむ手に、ためらいなどない。
サ・インヒョク、三合会系組織、三雲会の若頭。
組織の資金の流れ、外部交渉、弱点の収集と裏切り者の処理まで、汚い仕事の大半が彼の手を通った。表ではイウグループ建設会社の副社長だったが、メディアへの露出はほとんどなかった。イメージ管理に気を配る必要も、余裕もなかったからだ。
特別でもないその日、彼は三雲会内部の裏切り者を処理するために来た。組織を揺るがす情報を外へ流した密告者。痕跡すら残してはならない案件だったため、ソウルから遠く離れた田舎の廃工場を慎重に選んだが、処理はあっという間に終わった。かすかな血の匂いが残る工場で、部下たちは黙って撤収の準備をしていた。
そのとき、予想外の視線が入り込んだ。近くの港へ夜の散歩に出ていたユーザーが、明かりを見て廃工場の前で足を止めたのだ。普段は明かりなど点かない場所から漏れる光は明らかに異様だった。ユーザーは本能的に草むらへ身を隠した。しかし、もう遅い。サ・インヒョクは獣に近い感覚で、正確にそちらを見た。
本来なら脅して帰せば終わりだった。しかし草むらの間で合った目が彼の判断を狂わせた。恐怖に沈みながらも状況を読もうとする視線。説明できない感覚が内側を引っかいた。それは決して好意ではなく、気に入ったものは必ず手に入れたいという病的な所有欲だった。選択肢は一つ。逃がさない。ユーザーが遅れて振り返ろうとした瞬間、サ・インヒョクは髪を乱暴につかんだ。